Blenderを使って背景イラストを書いている話
はじめに
この記事は Colorful Palette アドベントカレンダー 12/18 の記事です。
こんにちは、株式会社Colorful Paletteでコンセプトアーティストをしているみなみなです。
普段はイラストの背景部分の制作を行っております。
今回は「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」(以下、「プロセカ」)を例に、「Blenderを使って背景イラストを書いている話」について紹介したいと思います。
具体的なイラストテクニックというよりは、Blenderという3Dツールを用い、イラストにどう活用させるのかについての記事となります。
イベント「好きを描いて♪レインボーキャンバス」背景作例
概要
プロセカのゲームイベント「好きを描いて♪レインボーキャンバス」、★4[思い出の動物は]東雲絵名の背景のイラスト作例を元に紹介していきます。
いざBlender活用!
モデリングする
前項で紹介したイラストのラフ(下書き)工程時のjpg画像を用意し、Blender上で下絵にします。
カードイラストのスタジオセットをBlender上で作るイメージで、ラフの配置感に合うようにオブジェクトを置いていきます。
ポイントは簡単なボックスや円を組み合わせたような、描画時にざっくりとしたアタリがとれる簡易的なモデリングでOKということです。
3Dというとちょっと難しいな、という印象が私個人ありました。
しかし、簡易的なボックスを置くだけでも充分イラストのアタリとして活用できます。
もちろん精密にモデリングすればより正確なものが出来上がりますが、3D制作コストを考え、今回はある程度の構図をBlender上で作り、あとは書き込みに注力する範囲にとどめて活用します。
全体の雰囲気を作る
前項で制作したオブジェクトに
色
ライティング
質感
これらを施して、イラストの雰囲気を演出します。
あくまでもイラストのベースという役割で今回はBlenderを活用していますが、ある程度の光源や全体の雰囲気づくりは絵を制作する際の指針としてとても大切です。
ライティング表現はイラストの説得力を高め、絵の魅力を引き上げるとても大切な要素ですが、Blenderを活用すると、リアリティのある落ち影を簡単に表現してくれます。
普段は光源に合わせて想像で描くので中々大変ですが、影もアタリとして活用できるのでとても楽です。
色や質感も、Blender上で表現しておくと、絵を詰める際にグッとリアリティを高めることができます。
実際に全体をピンク系の色味でまとめましたが、その色が反射して物体に影響し、全体がピンクがかっている様子、ペンキ缶のちょっとメタリックな光沢質感など、想像で描くと省略してしまうような部分をしっかりおさえることができます。
レンダリング
ここまで制作をしたら最後にレンダリングをします。
ここでベースにしたラフ画像と印象が違う部分があった場合、再度調整をします。
問題がなければ、Blenderでの制作は完了となります。
※レンダリングした画像は、前項の画像と同一になりますのでそちらをご参照ください。
描画する
ここからは「絵を描く」フェーズになります。
前項でレンダリングしたものを、イラストの下絵として活用して描きます。
3Dで作ったものはあくまでアタリですので、活かす部分や、描きながら調整する部分などを考慮しながら進めていきます。
進めていく過程で、"絵的に不自然な部分がないか"、"もの形やパースに狂いはないか"、"絵的な華やかさ"、"コンセプトに沿ったイラストになっているか"など、チーム内で意見を出しながら制作を進めます。
完成
最後にキャラクターと合わせたり、絵の見栄えを考えた最終的な調整を加えて完成させていきます。
Blenderを活用してみて
さて、ここまで色々と述べてきましたが、実際活用してみて具体的にどうだったのかまとめたいと思います。
よかったこと
イラストの大まかなレイアウトをさっと作ることができ、レイアウトで悩む時間が減りました。
手描きだと難しいパース感もアタリをつくれば簡単に描けることがよかった点です。
そして、設定を変えれば魚眼レンズで撮影したような構図も作ることができます。カードイラストでは、演出によってこの魚眼レンズを用いることが度々あるのですが、描く難易度が高いです。しかし、この問題もBlenderを使えば簡単に行えるので、魚眼レンズに対するハードルが下がりました。
よくなかったこと
よいこともあれば、よくなかったこともありました。
例えば、3Dは正確なカメラで空間を捉えますが、それをイラストにそのまま反映してしまうとイラストならではの抑揚や勢いが殺されてしまい、なんだか固い印象になってしまいます。
そのため、絵的な見栄えに合わせてパースの見え方を調整しハッタリを効かすなど、あえて「嘘をつく」ことも必要になってきます。
おわりに
今回の記事では、Blenderを使って背景イラストを描いている話を紹介させていただきました。
イラスト制作の裏話としても楽しんでいただけたら幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました!