BGM、セリフ以外の全ての音を表現する〈効果音〉について
はじめに
この記事はColorful Palette アドベントカレンダー12/6の記事になります。
こんにちは!
株式会社Colorful Paletteでサウンドデザイナーをしている、さーもんです。
「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク(以下、「プロセカ」)」のイベントストーリーの効果音制作に携わっています。
今回は、効果音について紹介していきたいと思います!
効果音とは
サウンドってBGMのことじゃないの?
と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実は、BGM以外にも「効果音(SE)」というものが鳴っているんです。
プロセカだと
「ノーツを押すときの音」
「決定やキャンセルボタンの音」
「イベントストーリーのキャラクターたちの足音」
などがあります。
サウンドデザイナーは、上記のような効果音を制作しています。
せっかくなので、プロセカの画面でどのくらい効果音が鳴っているのか聞いてみましょう!
BGMをOFFにして効果音だけを鳴らしてみました。
動画はこちらです。
(個人情報のため、上部は少し切れています。)
思ったよりも鳴っていませんでしたか?
このように無意識に聞いている部分もかなりあるんです。
効果音の制作工程
では、どのようにしてゲームの効果音が作られているのかご紹介していきたいと思います。
1.方向性を決める
まず、方向性(シリアス、コミカル、日常、ハートフルなど)を決めます。
効果音は場面によって音の方向性を変える必要があります。
キャラクターの悲しい感情が引き立つよう、悲しく聞こえる音にしたり、ストーリーが全体的にコミカルな場合は面白い音にしたりします。
この方向性を決める作業は、結構重要なんです。
極端な例ですが、
シリアスな雰囲気のときに元気もりもりなテンション高めな音が入っていたら、スマホ壊れた…?と思ってしまいますよね。
同じ動作や挙動でも、感情や状況が違えば異なる音にする必要が出てくるのです。
実際にどのくらい印象が変わるのか聞いてみましょう。
足音を例に比較してみました。
①は少し怖い雰囲気の足音、②は日常の足音になります。
このように、足音だけでもかなり印象が変わるんです。
2.要素
次に、その場面を伝えるために何が必要なのか要素を洗い出します。
例)コンクリートの足音
・足が地面に着地する靴の音
・地面の砂利の音
・洋服が擦れる音(衣擦れ音)
・その他身に着けているもの(リュック、アクセサリーなど)
3.素材選び
洗い出したら、要素に合った音を効果音素材集(ライブラリ)というものから選んでいきます。
素材集とは効果音のデータファイルが何万個と入っているものです。
素材集の種類にもよりますが、
爆発や銃などの戦闘音
水や風などの自然音
動物や虫の鳴き声
現実には存在しないようなサイバー感のある音
など、ありとあらゆる音が入っています。
余談ですが、これが無いと、
画家が絵を書くときに鉛筆が無い、
ギタリストが演奏する時にギターが無い、
ということと同じようなものなので、サウンドデザイナーは仕事ができなくなってしまいます…..
ですのですごく大事にしています。死守です。
4.組み合わせと加工
そのあと、素材を組み合わせたり加工をしたりして一つの効果音を作っていきます。
加工方法は実に様々で、よくおこなうのは以下になります。
ディレイ:元の音が鳴った後にやまびこのように繰り返すことができる。
リバーブ:元の音に余韻を付け足し、コンサートホールで鳴っているような響く音にすることができる。
イコライザー(EQ):高音を聞こえにくくして籠った音にしたり、低音を聞こえにくくしてラジオのような音にすることができる。
などなど…
他にもたくさん加工方法があります。
打撃音:「①拳が肉に当たる音」+「②骨の折れる音」を組み合わせる。
同時に音が鳴ると聞こえにくくなるので、②だけ少し後ろにずらして音が重なる部分を減らす。
加えて①にフェードアウト、②にフェードインをそれぞれ少しかけて、音のぶつかりをさらに軽減する。
大きい剣:強さ&重さを表現するために、剣を振り下ろす風の音を高音から低音に急激に変化させたり、かっこよさを出すために音をわざと歪ませる。
クラッカー:栓抜きと銃の音を重ねる。銃の音は余韻の音をカットし発砲部分だけを使用。全体的に低音域を削ってクラッカーの軽さを表現する。
などなど…
普段は、素材集を使用して音を制作しているのですが、レコーダーで実際に録音をして素材を作り出すこともあります。
効果音がゲームで鳴るまでの工程
プロセカではどのような工程で効果音が鳴るようになるのでしょうか。
今回はイベントストーリーで効果音が鳴るまでの工程をご紹介します。
流れは以下になります。
効果音の発注依頼を受け取る
シナリオを読む
制作
実装&確認
QAチームに確認していただく
1.効果音の発注依頼を受け取る
まず、シナリオチームとスクリプトチーム
(スクリプトチームは、ストーリーの演出やキャラの表情管理などを担うセクション)
から発注依頼をいただきます。
発注はイベントストーリーごとになります。
2.シナリオを読む
そのあとシナリオを読み、効果音の方向性を決めていきます。
こんな効果音があるとよりいいのではないか?
こうしたらより伝わりやすいんじゃないか?
とサウンドからスクリプトチーム側に提案することもあります。
過去例)
空港の環境音:元々の依頼は環境音のみだったが、オリジナルアナウンスがあればより面白いのではないかと提案し、新たにボイスを収録した。
お正月のイベント:獅子舞など新しい演出だったため、既存の音ではなく新しい音を入れるとよりいいのではないかと提案。
コミカルさをより出すため、素材出しや鳴らすタイミングも含め、全てのディレクションを行った。
3.制作
シナリオを読み込んだあとは先ほどの制作工程の通り、方向性を決めたり、要素を洗いだしたり、素材を選んで加工したり…という感じで、実際に効果音を作っていきます。
毎回オリジナルの効果音を作っています。
4.実装&確認
開発用のスマートフォンに一度実装し、鳴り方を確認します。
制作ではヘッドフォンを使用しているのですが、ヘッドフォンとスマートフォンは聞こえ方が異なるので、
いい音ができた!
と、るんるんでスマートフォンで音を鳴らすと
……ん?なんか思ってたのと違う……となることがあります。
そのため確認をする必要があるのです。
5.QAチームに確認していただく
完成した効果音を実装した後、
リリースされるまでに漏れがないかQAチーム(リリース前の最終チェックを行っているセクション)
にチェックしていただきます。
修正箇所があった場合は、その部分を直して再度実装します。
おまけ:嘘の音
効果音は”嘘の音”を作ることがあります。
え、それって大丈夫なの…?
と思った方もいらっしゃるかもしれません。
実は場面によっては、嘘の音のほうがしっくりくることもあるんです。
例えば宇宙の音です。
音は、空気が音を伝達することによって私たちに音として聞こえています。
しかし、宇宙には空気がないため、音が伝達されず音が聞こえないのです。
仮に、宇宙の大迫力の戦闘シーンがあったとしましょう。
本物に寄せると、無音、もしくは宇宙船や宇宙服の中で鳴る音のみになると思います。
しかしそれでは味気ないですよね。
そこで、こんな音が鳴っていれば宇宙っぽい迫力のある戦闘を表現できるかも!と想像力を働かせ、嘘の音を制作していくのです。
他にも、よくよく聞いてみると実は本物ではない場合があるんです。
例)
セロリを折る音 ➡ 骨の折れる音
洋服のバサバサ音
傘をバサバサする音 ➡ 鳥の羽ばたく音
油で揚げる音
小豆を落とす音 ➡ 雨の音
などなど…
全部がこれらの音で作られているわけではありませんが、今まで聞いていた音が全く別のものから作られていたなんて意外ですよね。
効果音制作の面白さ
効果音は正解がありません。
以前、サウンドのメンバーと同じ映像に音をつけたことがあったのですが、お互いに全然違う音になりました。
効果音には個性が出るので、そこが面白いなと私は思います。
そして、毎回どんな音にしようかな、こうしたらもっといいかもしれないと考えることが楽しいですし、それがイメージ通り出来上がったときには達成感もあります。
おわりに
今日は「音の日」だそうです。
効果音はプロセカに限らず、ゲーム、アニメ、映画、広告など、ありとあらゆるところで鳴っています。
普段気づかないようなところで鳴っている効果音に、少し耳を傾けてみると面白いかもしれません。
最後まで見ていただきありがとうございました!